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[コラム]


乾坤一筆
7日

剣の道に"巌(いわお)の身"という言葉がある。相手のどんな攻めにも動じない理想の構えとされる。

かつてヤクルト、西武で指揮を執った広岡達朗氏は構えを重視した一人。著書「私の海軍式野球」(サンケイ出版刊)で元広島の内野手、三村敏之さん(故人)の守備を好例に「どこへボールがきてもビクともしないというムードがあった」と"巌の身"に触れている。

ヤクルトで、構えに心がこもるようになった選手がいる。山田哲人内野手(23)だ。今季から1軍で選手を指導する三木肇作戦兼内野守備走塁コーチ(38)が、山田の野球観を変えつつある。

「彼にはいろいろな着眼点を持つ、気付くことが重要と話をした」

師弟の間に知らず知らずにサインが生まれた。人さし指を立てた手を頭の上に乗せる。人さし指がアンテナ代わり。三木コーチが「アンテナの調子は」と聞くと、山田が「きょうはこんな感じです」と応じる。ピンと伸びた日もあれば、曲がる日もある。人さし指の長さで感度を表現する。

山田は昨季193安打を放ち、日本選手の右打者のシーズン安打記録を更新した。今季はより高みを目指し、守備、走塁を重視した。そのためのはじめの一歩が物事に気付くためのアンテナの"設置"だった。「根拠は」「別の方法は」「相手の視点は」。ビデオを見て問答を繰り返した。

「興味を持つと考える力が付く。守備を考えられるようになって、走ることにつながっている」

山田は打撃に加え、盗塁でも数字を伸ばす。三木コーチは「数ではない。質が高いかどうか」と厳しいが、「(リードなどの)構えが早くなった」と評価する。山田は「三拍子そろった選手の方が息の長い選手になれる」と努力を信じる。

1978年、ヤクルトを球団初の日本一に導いた広岡氏は「心が動いて、体も動く」ことを大切にした。走攻守で成長を遂げる山田。コーチの指導で心が動き、汗を流した23歳の努力が浮かんでくる。(上野 亮治)


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