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[コラム]


乾坤一筆
5日

ブライダルウエア販売・レンタル会社を経営する知人から先日、妙な相談を受けた。

「実は新郎が身長1メートル75で体重は145キロもある方で、紋付きが見つからない。知り合いの力士から、借りられないだろうか」

いろいろ世話になった人のお願いなので、むげには断れない。そこで、同じようなサイズの元関取数人にお願いしたところ、快諾をいただいた。胸をなで下ろしたが、その際、元力士が立ち上げた新しいビジネスの存在を知った。

「お相撲さんドットコム」という名の会社で、巨漢を必要とするイベントなどに元力士を"派遣"するほか、相撲に関心がある外国人観光客を相手に都内の土俵のある居酒屋などで、元力士たちが四股、すり足など相撲の基本から上手投げをはじめ数々の技を説明、解説する。観光客が希望すれば元力士を相手に実際に相撲を取ることもでき、好評だという。

会社を立ち上げた元十両・魁道の田中康弘さん(39)は「CMに出演する力士役の役者を探すのに苦労していると聞いたので、力士の第2の人生のためにも始めてみた。まだ軌道に乗っていないけど、これからも営業にがんばりたい」と意気込んでいる。

相撲に限らずボクシングなどの格闘技は、野球、サッカーに比べるとプロになるための門戸は開かれている。入り口が広い分、相撲でいえば給料がもらえる十両以上、ボクシングなら日本王者以上になれるのは一握り。大多数が志半ばでその世界を去り、第2の人生を送る。

元力士の引退後の仕事といえば、ちゃんこ店が王道だが、夏場に苦戦することが多いという。現役時代の体を生かして仕事ができるという点で、田中さんが始めたビジネスは画期的だ。元スポーツ選手の第2の人生に、その競技の特性をフルに生かしたアイデア勝負で起業できれば夢が持てるはず。柔軟な発想はどの業界にも必要。もちろん新聞業界も見習いたいところだ。(伊藤 隆)


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