乾坤一筆
23日
法廷もの、といわれるジャンルの映画に「アラバマ物語」(1962年製作、米国作品)がある。主演男優グレゴリー・ペックが弁護士役を演じ、暴行容疑で逮捕された黒人青年の弁護を引き受け、人種的偏見と闘う姿が描かれた秀作だ。
グレゴリー・ペックなら、この発言にどう立ち向かうだろう。NBA(米プロバスケットボール)ロサンゼルス・クリッパーズのオーナー、ドナルド・スターリング氏の黒人差別発言が収束しない。NBAから永久追放処分と罰金250万ドル(約2億6000万円)を科され、オバマ大統領からも非難されながら、同氏はさきに再び元スター黒人選手を侮辱した。
北米4大プロスポーツにはNBAのほかMLB(米大リーグ)、NFL(米プロフットボール)、そして、NHL(北米プロアイスホッケー)がある。リーグにおける黒人選手の比率はNBAが約80%前後、NFLが65〜67%、MLBが14〜17%、NHLが1〜3%とされている。2009年4月時点で、NHLの黒人選手はわずか7人、という統計も残る。
北半球で盛んな競技という地域性もあるが、アイスホッケーはフィギュア同様、スケーティングのテクニックを早い時期から身につける必要がある。競技施設使用の費用負担、防具など用具費、幼年期にチームに所属すればコーチへの報酬、運営費もかかる。幼いときの境遇で参加への識別がなされてしまうのだ。
スポーツビジネスでは、こうした状況を「カラーライン」と表現する。人種差別とは趣を異にし、受け入れざるを得ない現実として直視する。一部のトップ選手が有色系人種であるために容認されているが、プロゴルフやテニス、F1ドライバーにも「カラーライン」は存在する。
公民権運動の指導者として有名なキング牧師は1963年8月、人種差別撤廃を求め20万人以上が参加したワシントン大行進で「I Have a Dream」(わたしには夢がある)との名言のあとに、「わたしの4人の子供たちが、肌の色ではなく人となりで評価されるような国に住むことを-」と続けた。
子供たち4人がそろって4大スポーツの舞台へ立つ。そんな親の夢の前に、いまも"一本の線"が引かれている。(奧村 展也)
・乾坤一筆(7日)
・乾坤一筆(6日)
・乾坤一筆(1日)
・乾坤一筆(31日)
・乾坤一筆(30日)
□ページの上へ
驪コラムTOP
戀サンケイスポーツTOPへ
(C)産経デジタル