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[コラム]


乾坤一筆
20日

東都大学野球でリーグ戦5季連続優勝した亜大の強さの源は何か?

「優勝はたまたま。いつ最下位で入れ替え戦か、と思っていますよ」。優勝決定後の生田勉監督は必ずこう話す。

確かに選手層だけみれば、恵まれているとはいえない。明治神宮大会決勝で破った明大はスタメンで甲子園不出場は1人だけ。逆に亜大は4番・中村篤人外野手と5番で主将の嶺井博希捕手(DeNAのD3位指名)の2人が甲子園組だった。

学生7万人の日大などとも違い、総数約6000人で、付属や系列高校もない。スポーツ推薦は1学年25人以下で、野球部員は毎年100人以下が基本。無名校出身や中央で無名の選手もいる。

そうした中、「教える側、まとめる側は、試合に出場する者と同等の力や考え方を持っていなければついていかない」という部の考えで、学生コーチ、主務の人選を重要視する。今季の福呂尚平コーチは3年までリーグ戦に出場し、レギュラー争いをしていた。国友賢司主務は中京大中京高時代に夏の全国優勝時の二塁手で2年までベンチ入りしていた。卒業後、指導者の道に進むこの2人がチームを支えていたのは確かだ。

監督、徳田紀之コーチの体制下、伝統的な練習量も忘れてはならない。3代前の矢野祐弘監督は投手に「365連投が基本」と説き、エースの3連投も珍しくなかったという。昨年のエース・東浜巨投手(現ソフトバンク)も今年の主戦・九里亜蓮投手(広島D2位指名)も登板前日に150球以上投げ込んだことがよくあった。沖縄などでキャンプも行い、オープン戦も数多い。

「いつ授業を受けているのか?」という疑問が起こるが、実は土曜日は1、2年生の登校日とし、語学や簿記など必修科目の単位を修め、3、4年生は休む。体育祭、学園祭に参加し、吹奏楽団の演奏会にも顔を出して交流する。

さらにほぼ全員が教職課程を履修する。「プロに進むのには不要」といわれるが4年間の学生生活を全うし、教育実習で教える難しさを知ることがその後の人生のプラスになるという考えからだ。

5連覇達成のご褒美のように来年3月16日には球場が全面人工芝に生まれ変わる。守備を鍛える全面土のサブフィールドも設ける。ソフト面だけでなく、新たな黄金時代へ、ハードも整えられている。(赤堀 宏幸)


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