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[コラム]


乾坤一筆
14日

すっかり実業家の顔だ。元巨人の阿野鉱二さん(65)。現在、「スチールエンジ株式会社」の会長を務めている。

「年商は40億円。一時は80億を超えた年もあったが赤字部分を精算し、すっきりさせた。今年は50億を超えるでしょう」

小学生の時にソロバン初段。暗算が得意で、数字がポンポンと出てくる。仕事は鉄骨を扱う建築工事業。社員50人、職人300人。東京を本社に名古屋、大阪、福岡、仙台に支社を展開し、床版の専門工事では業界トップ、といわれている。

1991年限りで巨人を退団し、44歳にしてサラリーマン生活に飛び込んだ。ところが第二の人生を賭けた会社は倒産。自らも借金を抱えたが、新会社を設立する逆転の発想で窮地を脱した。22年後の今では巨人の後輩、松谷竜二郎さん(49)に社長業を任せ、関連子会社「ビーアーム」の会長も兼任している。

「名前の鉱二は鉱山の鉱。縁を感じるし、大学を卒業するまで22年。巨人でも22年。そしてセカンドキャリアが22年目。運命だね」

実は、密かに"ビンゴの阿野さん"と呼んでいる。早大は筆者が入学した年の秋、東京六大学リーグ戦で法大の天下に風穴を開けて優勝。中心となって活躍したのが首位打者となった3年生の阿野さん、谷沢健一さん、荒川堯さん、千藤三樹男さん、小田義人さん、小坂敏彦さん、安田猛さんら後にプロに入った人たち。後年、彼らを次々に取材する縁を得たが、巨人を担当して最後にやっと阿野さんにたどり着いた。自分の中では"ビンゴ!"だったのだ。

当時、阿野さんはバッテリー兼トレーニングコーチ。早大の後輩、山倉和博を正捕手に育て上げた手腕はもちろんだが、ユニークな実績を残した。なんと、伝統ある巨人のトレーニング法を解体。自費で渡米までして、阿野流のストレッチ法を確立したのだ。

これを『巨人軍のストレッチ』という本にしたベースボールマガジン社の池田哲雄社長はこう証言する。「人気絶頂の定岡(正二)さんらをモデルにした素晴らしい本で、わが社の歴代ベストセラーの1冊です」。

実業家の芽はあった!

「研修を受けて母校の監督をやるのもいいが、こういうセカンドキャリアもやりがいがある。『勝つのが仕事!』という4冊目の本を書いたから、読んでほしいね」

阿野さんの熱さは、まだまだ真っ盛りだ。(小林 忍)


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