乾坤一筆
21日
大相撲夏場所限りで定年となった最高位の立行司、第36代木村庄之助こと山崎敏広さん(65)の「定年を祝う会」がさきに開かれ、日本相撲協会・北の湖理事長ら約500人が労をねぎらった。49年間の行司人生で一度も休場しなかった"鉄人"は、長続きした秘訣(ひけつ)を「(土俵で)お相撲さんと衝突しなかったことかな」と冗談まじりで説明した。
立ち位置が悪かったり、反射神経が鈍いことなどが原因で、実際、力士と接触して土俵から落下し、救急車で搬送された行司もいた。
行司は経験値が重視され、事実上、入門期(年齢)によって「見習い」から始まり、序ノ口格、序二段格、三段目格、幕下格、十両格、幕内格、三役格、立行司へと出世していく。
だが、いまやサラリーマンでも「年功序列」は風前の灯になっているのが実情。「日本相撲協会寄付行為施行細則」の行司賞罰規定でも、階級順位の昇降は年功序列によることなく、成績評価基準に基づき、理事会で決定する案件とされる。土俵上の勝負判定の良否、姿勢態度の良否など6項目の基準によって「著しく成績優秀なものには抜擢により番付順位を特進させることができる」(第5条)とあるのだ。
そこから名行司も生まれた。直近では27代木村庄之助(本名・熊谷宗吉)だろう。行司選抜制度を適用された昭和49年1月、三役格行司をごぼう抜きして式守伊之助に昇進。51歳の庄之助昇格は現在でも最年少記録だ。庄之助在位は行司定年制後最長となる79場所で、1185番を裁いた。
サンケイスポーツ評論家の藤島親方(元大関武双山)は勝負審判員として土俵下から目を光らせているが、「若くても切れのある動きや、差し違えの少ない巧みな行司はいる。すべてが年齢ではないように思う。(行司規定を)積極的に適用してもいいのでは」と提言する。
大相撲は番付で「一枚違えば家来同然、一段違えば虫けら同然」といわれる厳しい世界。力士の地位が1つの星で上降するなら行司にも緊張感があっていい。"名脇役"を生む規則を無駄にはしたくない。(奧村 展也)
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