乾坤一筆
8日
2010年に日本野球機構が12球団の監督、選手ら計858人に実施したアンケートで、「最高の試合」部門の1位に輝いたのが1994年10月8日の中日-巨人(ナゴヤ球場)。視聴率48・8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)はプロ野球中継の歴代1位だ。
同率で並ぶ2チームがシーズン最終戦で直接対決し、勝った方が優勝というのは後にも先にもこの試合だけ。当時の巨人・長嶋監督が「国民的行事」と表現した大一番を徹底検証した『10・8 巨人vs中日 史上最高の決戦』がこのほど出版された。著者はサンケイスポーツ「球界インサイドリポート」でおなじみのスポーツジャーナリスト、鷲田康氏。両チームの関係者はもちろん、球場近くのラーメン店主まで証言者として登場している。
当時、鷲田氏は報知新聞の巨人キャップ、私は産経新聞の巨人担当。試合中は2人とも球場の、お世辞にもきれいとはいえない記者席にいた。私はどんな小さな出来事も逃すまいとスコアブックを真っ黒にしていたはずなのに、あまり試合の記憶がない。優勝原稿はほぼ完成し、あとは試合の様子と長嶋監督の談話を入れるだけ。しかし、負けたときの原稿は用意していなかった…。
この年の巨人は前半戦を独走し、8月18日に優勝へのマジックナンバー「25」が点灯。その後に急降下し、9月28日には猛追してきた中日との直接対決に敗れ、ついに並ばれた。親会社の読売新聞創刊120周年と球団創立60年という節目の年でもあり、V逸となれば長嶋監督の進退に発展するのは必至だった。試合は巨人が6-3で勝ち、ほっとしたことだけはよく覚えている。
本を読みながら試合展開も徐々に思い出し、報道陣に配られた大入り袋を久しぶりに取り出してみた。だが、読み終えても一つだけ分からないことがあった。鷲田氏は「10・8」をどう過ごしたのか。
「いつもの遠征と同じで、前夜は徹夜でマージャンをしていました。宿に戻ってシャワーを浴びてから球場へ向かいましたが、テンションが高いから眠くはならなかったですね」。人それぞれに事情があるものだ。 (松尾 雅博)
・乾坤一筆(4日)
・乾坤一筆(3日)
・乾坤一筆(28日)
・乾坤一筆(27日)
・乾坤一筆(26日)
□ページの上へ
驪コラムTOP
戀サンケイスポーツTOPへ
(C)産経デジタル