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[コラム]


乾坤一筆
15日

開幕への準備を進めるサッカーJリーグの各クラブより一足早く、日本代表は今月6日にラトビアと対戦して3-0の快勝。2013年の初戦を白星で飾った。

来月26日にはW杯アジア最終予選でヨルダンと顔を合わせ、勝てば2試合を残して本大会出場が決まる。ブラジル切符獲得はまず、間違いのないところ。MF本田圭佑が「世界のトップを狙う」とすでに公言しているように、本番での戦いに関心は移るだろう。

隔世の感があるな、と思い出すことがある。1997年10月26日。フランスW杯アジア最終予選で日本とUAEの激戦が終わった東京・国立競技場は、異様な雰囲気に包まれていた。

同予選で苦戦を強いられた日本は、加茂周監督の更迭と岡田武史コーチの昇格という荒療治を行ったが、1勝3分け1敗の崖っぷちでこの試合を迎えた。しかし、先制しながら追いつかれて1-1のドロー。韓国のW杯出場が決まる一方、日本はフランスが遠のいた。

ふがいない結果にサポーターは殺気立った。「何やってんだ」「お前ら、やめちまえ」。怒号が飛び交い、ペットボトルが乱れ飛ぶ。パイプ椅子が宙を舞った。

スタンド裏で生卵が投げつけられると、車から飛び出した選手がいた。FW三浦知良だ。ゴールを奪えないエースに「やめろ、やめろ」の大合唱が降り注ぐ。「オマエ、こっちへ来い」。記者の前で怒鳴り返したその目は、完全にキレていた。

暴徒と化したサポーターを今さら、非難しようというのではない。たった15年前はW杯の「出場権を手にする」ということに、応援する側は真剣な思いを託し、選手も必死だった。それを思い出しただけだ。

そしてご存じのように、日本は最終的にアジア第3代表決定戦でイランを破って初のW杯出場を決めた。この試合は前回予選の「ドーハの悲劇」と対比し、「ジョホールバルの歓喜」として記憶に残っている。

ここから数え、5大会連続5度目のW杯出場が目前となった。もはや、日本代表の試合に、簡単に心を揺さぶられたりはしないだろう。6月に開かれるコンフェデレーションズ杯での決勝進出か、それとも来年の本番での4強入りか。かつて夢に過ぎなかった狂喜の瞬間は、「もしかしたら」と思える目標へと変わった。 (古沢 一彦)


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